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古代ギリシア


 ギリシア人にとって、病気は主に生命を維持する体液(血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁)の異常混合によるものであり、その病因を生活様式、体質及び環境に見出そうとしていた。観察を重視する当時の医師たちは当然寄生虫の存在にも気づいたのである。

ヒポクラテス
 西洋医学の元祖とも言える名医ヒポクラテス(Hippokrates、紀元前460頃〜377頃)は人間に寄生する虫を「扁形虫」、「円形虫」、「回虫」の3種に分類した。「扁形虫」とはサナダムシ(条虫)を指しており、ヒポクラテスはその長さと排泄を観察したようだ。

『ヒポクラテス全集』ジュネーブ、1657年。
Magni Hippocratis Medicorum Omnivm Facile Principis Opera. Geneva, Typis & Sumptibus Samuelis Chouet, M.D.C.LVII. (224 x 365mm、九州大学附属図書館医学部分館所蔵)
hippocrates hippocrates


アリストテレス
 アリストテレス(Aristoteles、紀元前384〜322)は、『動物史』(Historia Animalium)で人間の寄生虫のみならず、家畜や野生動物の寄生虫についても述べている。内臓寄生虫に関して彼はヒポクラテスの3分類を踏襲している。

 彼はシラミの卵やノミの蛹の存在も認めていたが、体外寄生虫は汗と汚れから発生すると考えていた。こうして寄生虫の『自然発生』説(generatio spontanea = 自然発生)が生まれ、19世紀になっても研究者の多くがこれを信奉していた。

アレクサンドロス
 アレクサンドロス(Alexandros、トラレイス出身の学者、6世紀後半)は、「虫に関する書簡」(Epistola de vermibus)の中で、蟯虫、回虫、サナダムシを分類した。アレクサンドロスによれば、これらは腐った食物や消化の悪い食物と、体液によって生じるとされている。

 ローマ帝国でもこの水準を超えることはなかった。



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