なるほドリ:県立図書情報館の「古事記」展、見どころは?

毎日新聞 2013年01月29日 地方版/奈良

 ◇日独交流に見る理解と表現 翻訳やオペラなど多岐に影響

 なるほドリ 奈良市にある県立図書情報館で、古事記についての企画展が開かれるそうだね。

 記者 はい。2月1日から27日まで、日本とドイツの文化交流の中に表れた古事記に焦点を当てた「近世・近代日独文化交流における『古事記』−書物と人間の運命−」というタイトルの企画展です。

 Q へえ、そうなの。

 A 幕末以来、ドイツなど西洋の人々が日本との交流を通じて、古事記や神道にどのように触れ、理解したのかをたどるという異色の展示です。日本に滞在しているドイツ人研究者らが集う「OAGドイツ東洋文化研究協会」と共催し、ドイツ総領事館が後援しているところも、興味深い点です。

 Q 確かに、あまり聞いたことがない展示だよね。

 A 内容は、写真パネルや書籍の展示が中心になりますが、例えば、香椎造(かしいづく)りと呼ばれる建築様式の本殿(国重要文化財)を有する福岡市東区の旧官幣大社、香椎宮の宮司だった木下祝夫(1894〜1980)が古事記のドイツ語への翻訳を完成させた経緯などを紹介するなどして、国際交流という観点から古事記を考えます。

 Q へえ。

 A そのほか、作曲家の黛敏郎がオーストリアのリンツ州立歌劇場から依頼を受けて書き下ろし、96年に初演されたオペラ「古事記」の関係資料も紹介されます。

 Q いろいろとおもしろそうな資料が多いね。

 A この企画展を記念した講演会がおもしろそうですよ。2月2日午後2時から、同館1階の交流ホールで、ドイツ人の九州大名誉教授(日欧文化交渉史)、ヴォルフガング・ミヒェルさんが「書物と人間の運命−−日独文化交流における『古事記』」と題して講演します。江戸時代から明治時代にかけて展開された欧州の人々による神道研究、ドイツ・ベルリンで1920年代に行われた古事記のドイツ語訳プロジェクト、それに50年以上もかかった木下祝夫の古事記ドイツ語訳作業などを紹介し、日独文化交流の歴史を考えます。ミヒェルさんは74年に来日している研究者。講演はもちろん日本語で行われるので、安心ですね。無料で、事前の申し込みも必要ありません。関心のある人はぜひ聴講してもらえればと思います。<回答・山成孝治(奈良支局)>




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