原田宏編『統合ドイツの文化と社会』 九州大学出版会、福岡、 1996年


 【内容情報】


本書は、統合ドイツの社会的、文化的な変容状況を具体的、複合的に解明することを目的とし、同時に社会的融合を促進ないし阻止している政治経済的な条件とそれを支えている文化的、精神的な構造の解明によって現代社会における国家統合のあり方を展望しようとしたものである。

「BOOK」データベースより

 

 書評:

中国語担当の日下翠(くさかみどり,大学院比較社会文化研究科)さんが,中公新書として「金瓶梅天下第一の奇書」を出版されました。

(中略)

社会主義の理想とは大きく離れて国民を抑圧しつづけていた国のいくつかが次々に崩壊した数年前の時期,ドイツでは40年以上にわたって異なる社会体制のもとにあった東西ドイツが一つになりました。これは戦乱で国中が疲弊したのでもなく,また,片方の社会経済発展が極端に遅れていたのでもないところでのこれまでの歴史において例のない事態でした。「統含ドイツの文化と社会」(九州大学出版会発行,原田博編)は,そうした事態を対象にして本学の研究者たちが総合共同研究として取り組んだ成果の報告です。経済活動はどうなっているか,特に失業問題を含む雇用問題はどうか,地方自治体の財政はどうか,外国人労働者や外国からの流入者はどのように扱われているか,宗教の取扱いはどうなったか,文学の世界ではどのような状況が生まれているか,同一言語でありながら隔絶されていた国の言葉はどうなったか,といったことについて研究報告されています。この報告は研究の第一歩としてのものであるという断りがあるにもかかわらず,それぞれの間題点に社会文化のさまざまな要因が相互にからまっていることが読み取れ,総合共同研究ならではの著作となっています。この本を読んで私は,ドイツではさまざまな深刻な問題がありながらも政策努力,教育努力,個人努力が多様に繰り広げられていることを知ることができました。また,何度かのドイツ訪問の折に直に経験した事柄の意味が,この本を読んで初めてなるほどと理解できたものもあり,表面だけを見るのとは違った研究の視点からの理解の深さを知らされました。なお,専門家でない読者には後から前の章へと読み進めるほうが,読み易いのではないかと思います。

Radix 九州大学全学共通教育広報第10号、1996年9月30日、23頁。大学教育研究センター 押川元重<

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