Wolfgang Michel / Sukeyoshi Shimbo: Doitsu traberu kaiwa-jiten [Travel Conversation Dictionary - German]. Ikubundo, Tokyo, 2001. 296 pp. サイズ 19 x 13cm
ヴォルフガング・ ミヒェル / 新保 弼彬 『ドイツトラベル会話辞典』郁文堂、2001年。


書評『ドイツトラベル会話辞典』

 『ドイツトラベル会話辞典』 一短期ドイツ語研修旅行に頼もしい伴侶一

鈴木潔

8月の長い日もようやく暮れて辺りに闇が広がるころ、一群の学生が空港からバスで市内に向かう。ホストファミリーと対面、時刻も遅いので挨拶もそこそこにそれぞれの家庭に引き取られてゆく。いきなりドイツ語のみの環境に拉致されて心細いこと限りない。「疲れていない?」と尋ねてくれているmuedeの語が聞き取れず、「シャワーを使う?」とのduschenがなかなかわからない。学生たちは今更ながらに貧しい語学力を痛感しながら、不安なドイツ生活が始まる。ホストファミリーにもさまざまある。毎年留学生を受け入れている家庭、たまたま子供部屋が空いたからと学生を預かってくれる家。迎えられた次の日から「犬の散歩、お願いね」と1泊2日で家族旅行にでかけるというケースもある。日本では想像できないあっけらかんとした別居・離婚・再婚家庭もあれぱ、ママが働きパパは主夫という家庭もある。一人暮らしの中年女性の家庭。息子を溺愛する母子家庭の内幕に接することもある。一緒にビアガーデンに行ったり、散歩をしたり、夜遅くまで語り合って深い心の触れあいを感じるケースもあれば、どうしても折り合いがつかず、ホームステイ先を変更することもある。

同志社大学のサマープログラムは開始当初からドイツの家庭にステイすることが特徴となっている。8月というヴァカンスの時期に4週間も学生を受け入れてくれる家庭を確保するのが困難ではあるが、提携先の協力でなんとか続けている。学生にとって一番楽しい経験も、一番心配なのもこのドイツ人の家庭で寝食を共にするホームステイにある。

私たちドイツ語のサマープログラムは1988年から姶まった。初めの9年間はマインツで実施したが、97年度からミュンヘンが研修都市になっている。学部横断の総合科目(学際科目)として、毎週1回のドイツの言語と文化に関する授業を受け、かつ夏休みにドイツの大学で語学研修を受けるという運営形態だったが、ミュンヘンに変わって2年目の98年度から、言語文化教育研究センターが提供する夏期集中の外国語科目という位置付けに変わった。通年科目でなくなったため、事前の準備として既存のドイツ語授業を利用したり、講習会を開き、合宿したりして特訓している。すなわち1月に実施される選抜試験に合格した約20名の参加学生は、日本人とドイツ人の教員による週3コマ連動の「ドイツ語インテンシヴ」や、中上級者向けの「ドイツ語文化事情」や「ドイツ語表現法」、「ドイツ語上級会話」などの科目を履修し、かつ現代ドイツの文化一般に関する講習を数回受け、ときには合宿して参加者の相互理解を図り、ミュンヘンで研修を受ける準傭をするのである。

研修コースは、学生主体のアクティプな方法論ということで、教室の授業以外に街へ出て通行人ヘインタビューを試みたり、ミュンヘン大学の学生や市民と触れあうためのさまざまな計画が組まれている。幼稚園訪問、ビール工場見学、美術館や博物館での講習、演劇鑑賞、実際の裁判の傍聴。そしてキリスト教理解のための牧師館訪問といった文化プログラムが実施されてきた。週末にはミュンヘン周辺の文化財・文化施設を見学する。キームゼーへの遠足。アンデックス修道院でのコンサート。そのほか、『カルミナ・プラーナ』で有名なベネディクトポイエルン修道院での一泊旅行を行ったり、ザルップルク、レーゲンスプルク、あるいはアウクスプルクヘの遠足なども行っている。学生が各自の専門分野に応じてテーマを選択し、ミュンヘン滞在中にそのテーマについて調査を行い、秋学期に報告レポートを書くことになっている。

サマープログラム担当は数年前からドイツ語教員の持ち回りになり、今年はとうとう私の番が回ってきた。すでに昨年の秋から準備がスタートして、これまでの担当者からいろいろ助言をもらいながら事前作業に追われている。参加学生には大量のヒアリング課題を春休みの宿題として与え、さらに4月以降の準備学習で学生に推薦する参考書がないかと物色していたところ、タイミングよく『ドイツトラベル会話辞典』が出版された。会話本の類はドイツ語に限らずだいたい海外観光旅行者向けに作られていて、空港、ホテル、銀行、レストラン、買い物など旅先の特定の状況で必要になる言い回しが中心となっている。今回郁文堂から出たミヒェル/新保氏の著書は<トラベル会話辞典>と銘打って類書の内容は漏れなく押さえているだけでなく、「墓礎編」「滞在編」「応用編」の3部で構成されたそのすべてに短期留学生に役立つ表現が散りばめられている。例えぽ「墓礎編」の自已紹介の部分でも、語学講習やステイ先の家庭で利用できる表現の雛型が与えられている。「滞在編」には図書館でのやりとりや、語学講習の場での表現が含まれているが、何よりもホームステイの場面に1章が割かれているのが特記すべき点であろう。通りすがりのツーリストでもなく、また1年・2年と滞在する本格的な留学生でもないという、ある意味で中途半端な短期の語学研修生に必要となる表現が随所で学べるようになっていて、さすがに経験豊かな著者の目配りが光っている。

最近いよいよこの傾向が強まっているが、発音や、墓本的な語彙・文法を教える前に、他人と接近・遭遇して言葉を交わさない若者の行動様式を矯正することがドイツ語授業の第一歩になっている。彼らはコンビニ店にぬう一と入って、レジ係りの前に黙って品物を置く。レジスターに表示された金額を支払って、また無言で店を出る。教室への出入りもこれと同じである。私は教室に遅刻してきた学生などにはしつこく「おはよう」と声をかけ、返事をするまで許さない。人と人とが遭遇するとき、たとえばエレベーターで乗り合わせたとき、見知らぬ人でも「こんにちは」と言うのですよ、ということから教えなけれぱならない。ホームステイにおけるトラプルはこういうコミュニケーションの不足・欠落が原因のひとつではないかと私などは睨んでいるので、何より「墓礎編」の「コミュニケーションの始まり」をしっかり練習させたいと思う。「応用編」では、「ティベートのための自已表現」が中心で、短期語学留学生にはそこまでは無理だろうが、こういう表現を用いて議論できるようになるのが目指すべき水準なのだよと督励することにしよう。「手紙の書き方」は、ステイ先の家庭と文通が姶まるケースが多いので、帰国後の学習場面でさっそく役立つであろう。

この本は判型からも内容からも、ポケットに忍ばせてとっさの用に当てるというより、むしろ日本語では無意識に使っている日常のやり取りを、ドイツ語ではどう表現するのかを学ぷためのテキストとして、また、旅先での行動に必要となりそうなドイツ語表現を予めチェックしておく参考書として役立つように思える。ひょっとしたら、この夏ミュンヘンで、学生より引率の私が重宝して使わせていただくことになるかもしれない。

(同志社大学教授)

決定版!対話で覚えるドイツトラベル会話!これで話せる!―旅行のいろいろなシーンで役立つフレーズ満載!らくらく言い換え!―応用表現も充実!自己表現力を磨ける!ドイツがわかる!―会話のシーンごとにドイツの文化、情報を紹介。
基礎編(コミュニケーションのはじまり(会話への糸口;相手を知る;自己表現のいろいろ))
滞在編(ドイツへの旅立ち;空港から市内へ;泊まる;飲食;郵便・電話;ショッピング;ホームステイ先で;エンターテインメント;不調・病気・治療;人や紛失物を探す;尋ね方のいろいろ)
応用編(ディベートのための自己表現;手紙を書く)

紀伊国屋BOOKWEB


5つ星のうち5 充実しています, 2004/12/01

私は語学教材の選択にはうるさい方なのですが、この本はドイツ語の会話を学ぶための教材としてはかなりいい方だと思います。ただ結構本格的なのでドイツ語文法の基本を学んでいないときついと思います。逆にドイツ語を習ったことのある方にとっては、私の知る範囲ではベストに近いです。

amazon.co.jpレビュアー : hukidera

5つ星のうち4 個人旅行におすすめ!2003/12/09

私は旅行代理店のツアーにこの本持っていったのですが、固有名詞などの応用表現が多くて助かりました。ただ、レストランやショッピングでは参考になる部分が多かったのですが、ツアーということもあって<滞在編><応用編>を活用することはあまりありませんでした。「トラベル会話辞典」とありますが、ツアー向けというよりは個人旅行向けかと思います。
ドイツ社会についての説明が多いので、まだドイツ旅行の予定がない方にもお勧めです。例文はほとんどが対話形式なので、CDでは文章の抑揚のつけ方がとても参考になりました。

amazon.co.jpレビュアー レビュアー: 横芝真琴 ( 横浜)

決定版!対話で覚えるドイツトラベル会話!これで話せる!―旅行のいろいろなシーンで役立つフレーズ満載!らくらく言い換え!―応用表現も充実!自己表現力を磨ける!ドイツがわかる!―会話のシーンごとにドイツの文化、情報を紹介。

「BOOK」データベースより

語学研修旅行やドイツ語圏で仕事をする人のために、ドイツ語会話力の総合的な養成を目指して編纂。観光旅行をする人にもすぐに使える。目次やコラム索引で使いたい会話文が検索できる。すべて新正書法で記述。

「MARC」データベースより

 

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