ヴォルフガング・ミヒェル編『村上玄水資料(II)』
中津市歴史民族博物館分館村上医家史料料館資料叢書、中津市、2004年。


Wolfgang Michel(ed.): Murakami Gensui Materials 2. Nakatsu, 2004.

編者前書き
 昨年三月に刊行した村上医家史料館資料叢書第一集は村上医家の七代家督村上玄水の人体解剖と天文学に着目したものですが、その後の調査が進むにつれ玄水が関心を寄せていた他の分野についても見過ごすことはできなくなりました。
 本叢書には史料三篇と論文四篇を掲載しました。出島商館医シーボルトに関して国内外で数々の業績を挙げておられる東海大学の沓沢宣賢教授は、全国の写本『験方録』を比較し、その中における村上玄水写本『矢以勃児杜験方録』の位置づけをし、さらにシーボルトと日本医学の特徴を詳細に論じて下さっています。村上医家史料館蔵の軍学史料はこれまで一度も取り上げられたことがなく、今回初めて久留米藩にも精通している久留米大学大学院比較文化研究所の吉田洋一氏に、久留米の儒学者梯隆恭に三年間従学した村上玄水の軍学とその背景について分析し、村上玄水の人的交流に関する新しい視点を提示していただきました。また一九九〇年代の不況により厳しさを増してきた中津市の経済事情を念頭に、九州大学大学院比較社会文化学府の大島明秀氏に、中津藩の発展のために心を砕いた玄水の『富国篇』を追究し、経世家としての玄水の姿をはじめて浮き彫りにしていただきました。最後に編者は玄水写本「カスハル書口訣」の奥深い歴史的背景及び幕末の蘭学者の医学資料における問題について考察しています。
 上記の三名の方々には調査へのご協力及び充実した内容の原稿をお寄せいただいたことに対し心からお礼を申し上げます。今回の史料及びその分析により、中津藩の蘭学者村上玄水の広範な知的好奇心と、彼の学問をめぐる諸条件や状況が一層解明されることと期待しています。

 平成一六年 春


 目次

沓沢宣賢 「シーボルトと日本医学 - 村上玄水写本『矢以勃児杜験方録』を中心に」1


吉田 洋一 「江戸期中津藩村上家の軍学について」13
 【資料一】「戦法秘傳口訣」全文28
 【参考】山鹿素行『武教全書』「戦法」の条42


大島 明秀「村上玄水著『富国篇』とその背景」44
 【資料二】「冨國篇」61


W・ミヒェル 「新旧西洋外科術が混在する地方蘭学者の史料 村上玄水写の「カスハル書口訣」を中心に」71
 【資料三】「外療集驗方 五」189
参考文献98
索引100

 

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