中津市歴史民族博物館分館村上医家史料料館資料叢書 3、中津市、2005年
Wolfgang Michel (ed.): Murakami Gensui Materials 3. Nakatsu, 2005. 82pp.
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編者前書き
一昨年及び昨年に刊行した村上医家史料館資料叢書では医学は大きな比重を占めましたが、本年度のねらいは村上家の知的好奇心の幅をより鮮明に描くところにあります。
史料付きの論文を三篇を掲載しました。九州大学比較社会文化学府の朝稲香子氏は、これまで埋もれていた1839年刊の句集『豊前中津』の読解を通して、未解明であった天保期の中津俳壇の様相を明らかにした。また、その中に村上玄水の妻の入集が確認されたことにも注目されたい。本叢書では初めての文学に関する論考でもある。
同大学府の大島明秀氏は、これまでその内容が全く不明であった村上医家史料館の展示史料『老野子』が、近世後期に論争が巻き起こる「梵暦運動」史の中に位置づけられる文献であることを解明し、また、本資料の中に登場する二人の人物-梵暦的主張を唱える「有外子」とそれに反論する「老野子」が、それぞれ「梵暦運動」の開祖釋圓通、村上玄水であると同定した。
久留米大学の吉田洋一氏は、従来ほとんど検討されていなかった村上家所蔵の軍学に関する史料の中から、今後の村上玄水研究の新機軸となりうる史料を解説し、それのみにとどまらず村上玄水の自然科学全般に及ぶ思考様式の一端を解明した。
平成17年 春
ヴォルフガング・ミヒェル
目次
朝稲香子 |
『豊前中津』にみる天保期の中津俳壇
一、 『豊前中津』の書誌情報
二、 『豊前中津』の内容
編者及び編纂の意図
入集句について
三、 中津と美濃 |
1-10 |
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『豊前中津』 【原文】【読み下し】 |
11-21 |
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大島 明秀 |
村上医家史料館所蔵写本『老野子』における
「有外子」・「老野子」とその背景
一、 写本『老野子』の書誌情報
二、『老野子』の内容
三、「有外子」・「老野子」および著者は誰か
四、 江戸後期の「梵暦運動」史における『老野子』の位置づけ
五、『老野子』に見られる地理記述の情報源について
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22-32 |
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「老野子」 【原文】【読み下し】 |
33-52 |
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吉田 洋一 |
村上家の軍学修養―『旺相門解』を素材として―
一、玄水と隆恭
二、久留米藩政と梯隆恭
三、旺相門解について
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53-59 |
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『旺相門解』【原文】【読み下し】 |
60-75 |
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参考文献 |
76 |
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索引 |
80 |
