WALKS IN CYBERSPACE (4) - CHAT. BRUNNEN No.395, Ikubundo, Tokyo, Jan.1999, p.9-10.

ヴォルフガング・ミヒェル

サイバー空間の散歩(4) - 「チャット」


これまでのところ現在形でしか目にしてはいないが、chattenは間違いなく弱変化動詞〔chatten, chattete, gechattet〕 だろう。chatという英語に該当するドイツ語は別にあるのだが、このchattenの場合はコーヒーを片手に暖炉の側に坐ってのおしゃべりではなく、どこかのサイバー空間で話し相手と出会うことになる。チャットに参加するためにはWWW-ブラウザーだけあれば事足りる。ドイツのウェブサイトにはいわゆるチャットルームが長々とリストアップされている。私の印象ではまずWEBCHAT.DE("Die Schaltzentrale deutschsprachiger Chats")を試すのがいいだろう。WWW-Adresse (URL) http://www. webchat.deのリストには約 210のチャットルームがある(図1)。


図1 Webchat.deのリストより

たいていは名称を見ただけでその性格や参加者が想像できる。説明を少し読めば、内容によっては学生向きではないこともわかる。授業で使うのなら厳密な指示や説明をした方がいいだろう。参加者数はルーム毎に随時グラフで示される。



図2 チャットルームに入る

チャットルームにアクセスするには、最初に登録しなければならない。その際には「Nickname」(サイバードイツ語ではよくNickと略される)とパスワード、それにはたいてい電子メールのアドレスが必要になる。すぐ思いつくようなニックネームはすでに使われていることが多いので、できるだけ変わった名前をひねり出すべきだろう。サーバーによる確認はほとんど瞬時に行われる。ニックネームとパスワードを入力するとウィンドウが開き、参加者たちの文章が次々と現れる(図3)。



図2 チャットの例

チャットルームによっては自分のメッセージに好きな色をつけたり、参加するときのために好きな顔の形を選んだりできるものもある。チャットルームに入ったことはサーバーによって他の参加者に公示されるが、もちろん、必ず何らかのメッセージを書かなければならないというわけではない。ドイツ人同士が互いにどんなことを話しているのか、その様子をしばらくながめるだけでもいい。

しかしここできちんとした書き言葉を期待してはいけない。正書法もあまりあてにはならないし、文法や文体も混乱しているが、誰も気にしない。cu 〔see you〕のような短縮形も慣れれば文脈からわかるようになる。質問や意見にはたいてい誰かが反応してくれるし、運がよければ会話のようなこともできる。しかしサイバー空間では参加者は別の人格を演じていることが少なくないことを忘れてはならない。老人が若者を、男性が女性を、臆病者が大胆な放蕩者を、という具合である。もちろん誰もがニックネームの後ろに隠れている人物を探ろうとする。内容的にはかなり浅いが、チャットルームは「現実の」ドイツ語が見られる舞台として興味深い。

インターネットでは常に時差を意識しなければならない。日本で午前中にチャットルームに入ると、そこでは朝までコンピューターの前に向かっていた夜更かしのドイツ人に出会うことになる。

 

 

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